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BL、生活、その他いろいろ

無知な私を誰が守ってくれるのか

 らないっていうことは、とても怖いことだと思っています。知らないっていうことは、何かを判断するときの選択肢が少ないっていうことで、それは、何かが遭った時自分を守るための選択肢が少ないっていうことにも繋がるんだと思います。私はこういう話を、よく子供に何を伝えるか、何を言わないか、何を隠すかっていう議論でよく聞いていました。その話も後でするんですけど、ひとまず私が、知らないって怖いわ、知らない自分を誰が守ってくれるというんだ、と実感した時のことを書きます。

 

 私は男性が怖くて、苦手で、嫌いで、出来れば近寄りたくないし、近寄られると心身ともに不調をきたすし、友達も恋人もいらぬ、という時期があったのですが、そういうことを事細かに話した上で付き合いのある男性がいました。私は耳にタコが出来るくらいそのことをしっかり伝えていたつもりだったんですが、ところががどっこい、私はその人に(男女間のあれこれ的な意味で)狙われてたそうです。そのことはあとから他の友人たちに教えられて知りました。相手に確認する機会はありませんでしたが、思い返してみると確かに思い当たるフシも多々。しかもそこそこ際どい。それらのことを、私はとても気持ち悪く思っていたのに、相手に失礼だから、私の感じ方が普通じゃないだけだから、と見て見ぬふりをしていました。(余談ですが、世の中善意の人間ばっかりではないわな!善意の基準も違うしな!あと人生そのものについて自分と違う価値観持った人間もいるわな!そらな!!というのがその時の最大の教訓です。)

 周りの友人たちは、それがとても危うく見えていたそうです。私がとても無防備だったと。なので、その男性と会うときは出来るだけついていてくれるとか、私の為を思って色々手を回してくれていたのです。男性が嫌いな私がそんな話を聞いたら、と心配して、負担も顧みず黙ってやってくれていました。とてもありがたいことです。

 本当にとてもありがたいことなのです。だけど、私はこうも思っていました。気づいた時点で言っておいて欲しかった。

 どれだけ周りの人たちが注意してくれていても、その男性と会うのは私です。どれだけ周りの人が一緒にいてくれていても、やっぱり私と男性と二人きりになることもある。おそらく相手には私が男性嫌いだと話しても通じないし、私よりも力が強い。私はそれを知らない。そういう時、誰が私のことを守ってくれるんだろう。友人たちから話を聞いた時、周りから見えていた男性の行動にもぞっとしましたが、それ以上に、あまりにも無防備だった自分がとても怖かった。何も見えてなかった自分が本当に怖かった。それに、私だけが知らなかった、ということもショックでした。私以外の人は、私の知らない常識や前提の上で生きている。自分の常識だけでは何が起こるかわからないしだれかを傷つけても気付けない。私は何も知らなかった、甘かった。その後わりと長い間寝込みました。

 

 それまでに、ひとつの考え方として知っていた「知っておくことが自分の身を守る」ということを、(その主張が想定しているケースでではないかもしれませんが)体感した瞬間です。

 

 人によって物理的に守られる、というだけは、どうしてもフォローしきれないところがあるんだと思います。よく思うのは、性教育のケースで、性に関する情報は全て大人が管理しておいて、無知な子どもは周りの大人が守ってやればいいっていう考え方について。でも、そういう子どもたちだって、セックスする日がやってくるわけです。そういう時に、その子たちの親はどうするんだろう?子どもたちがセックスしてる隣にいて、「同意のもとやってる?」「コンドームちゃんとつけた?」「体は清潔?」「避妊失敗した時はこうしなさい」「AVでやってるプレイは相手を傷つけることもある」とかいちいちチェックするわけにもいかないじゃないですか(それはそれで想像すると面白いけど)。リベンジポルノとかもそう。デートDVもそう。子どもたちの生活の中で当然のように行われるようなことで、だけど、親や大人に見えないところで行われる、子どもを傷つけることっていうのは、ゴマンとあるはず。そういうことから、何も知らない子どもを誰が守るのか?

 

 そういう嫌な現実を知ることはとてもつらいしショッキングなことだ、というのも正しいと思います。だけどそれを知らないままそういう現実に直面してしまった時のほうがつらいのではないでしょうか。大人がコントロール出来ない・監視できないところで取り返しがつかないことが起きる前に、親や周囲の人間・学校の手の内で教育しておくほうがましなのでは?その教育で傷ついても周囲の大人がフォローすることもできるし、と私は思うのです。

 

 映画とか漫画とかでよく見ますけど「自分を守れるのは自分だけだぜ....」ってやつ。確かに~。勿論、周りの人の助けで、その子を救うことは十分出来るし、周りの人がいなければ守れない場合もある。まだ小さくて、知識の吸収が難しいような子とか、体力がない子とか、いろんなケースがあります。だけど、それだけではフォローできない部分も必ず出てくる。その時に、その子自身が「知っている」ことが、大きな武器になると思います。その子が生きていく上で、必要な知識やテクニックってあるはず。子供だけじゃなく、大人だって、常にそういうものを吸収して、鎧を固めて生きていく。無知なままでは生きていけないから。